Jun 21, 2014

英語から日本語への翻訳練習 English-to-JapaneseTranslation Exercise

英語から日本語への翻訳練習

課題文  "Elements of Euclid"をアレンジした文面を使用

英語

The two (2) triangles (ABC, DEF) shall be equal in every respect, if the following conditions are satisfied.
(1) The triangles have 2 sides (BA, AC) of one equal respectively to 2 sides (ED, DF) of the other.
(2) The triangles have the angles (A, D) included by these sides equal.

PROOF
[I]
  Consider the triangle ABC to be applied to the triangle DEF, where the point A shall coincide with the point D, and the line AB with the line DE, and that the point C shall be on the same side of DE as the point F.
[II]
  Since the line AB is equal to the line DE, the point B shall coincide with the point E.
[III]
  Since the angle BAC is equal to the angle EDF, the line AC shall coincide with the line DF.
  Since the line AC is equal to the line DF (hyp.), the point C shall coincide with the point F.
  Since [II] has been proved, the 2 points of the line BC and the 2 points of EF must coincide.
  Since two (2) right lines cannot enclose a space, the line BC must coincide with the line EF.
  Hence, the triangles agree in every respect.
  Therefore, BC=EF, ∠B=∠E, ∠C=∠F, and △ ABC=△DEF.


日本語

下の条件が満たされた場合、2つの三角形 (ABC, DEF)は同一である。
(1) 2つの三角形において、 一方の2辺(BAおよびAC)が、他方の2辺(EDおよびDF)とそれぞれ等しい。
(2) 2つの三角形において、上記2辺に囲まれた頂角(AおよびD)が等しい。

証明
[I]
  三角形ABCと対になるような三角形DEFを用意し、点Aが点Dと一致、線ABが線DEと一致、点Cが線DEに対する点Fと同じ側にあるとした場合を想定する。
[II]
  線ABは線DEと等しいので、点Bは点Eと一致する。
[III]
  角BACは角EDFと等しいので、線ACは線DFと一致する。
  線ACは線DFと等しいので(条件)、点Cは点Fと一致する。
  [II]が証明されていることにより、線BCと線EFの2点はそれぞれ一致することになる。
  2つの線には空間は存在しえないため、線BCは線EFと一致することになる。
  したがって、2つの三角形は完全に同じである。
  ゆえに、BC=EF, ∠B=∠E, ∠C=∠F であり、△ ABC=△DEF となる。



[備考:]
The two (2) triangles (ABC, DEF) shall be equal in every respect, if the following conditions are satisfied.

shallに関する英語の感覚:
日本語の語感では、「等しいものとする」「等しくなければならない」みたいな感じ。(上ではそれを考えたうえで、あえて「XXはOOと等しい」というふうに和訳。)

図面の指示でもshallは非常によく使われていて、たとえば「最大許容抜き勾配は 3°のこと」は、MAXIMUM PERMISSIBLE DRAFT SHALL BE 3°のように表現。


The triangles have 2 sides (BA, AC) of one equal respectively to 2 sides (ED, DF) of the other.
英語の感覚:
「2つの三角形があって…一方の三角形の2辺(BA, AC)が、もう一方で対応している三角形の2辺(ED, DF)とそれぞれ一致している…。」というイメージがはっきりあれば、大きく間違う心配は無し。


The triangles have the angles (A, D) included by these sides equal.
英語の感覚:
「三角形がこれらの辺に含まれた等しい角度を持っている。」みたいな風にしてしまうと、まるでワケが分からない。

技術系の翻訳だと、訳す側の頭の中に、最低限、下記のようなイメージがないとまずい。(今回の課題文は、技術とかではなく、幾何学の基礎に関する文面ではあるけれど…。)
"2つの三角形があって・・・それぞれ角Aと角Dがある・・・。で、その角Aと角Dは(1)で言及した2辺の間の角である・・・。”

このイメージを頭の中に浮かべたうえで、オリジナル言語(ここでは英語)の文章の語順、語彙、優先度を読み取りつつ、ターゲット言語(ここでは日本語)に翻訳。


Since the line AB is equal to the line DE, the point B shall coincide with the point E.
英語の感覚:
線ABは線DEと等しいので、点Bは点Eと一致しないといけない。(一致することとなる。)
CATIAのスケッチやアセンブリではよく使う拘束オプションないしコマンド名でCoincidenceというものがあって、これは日本語版だと、「一致」拘束とか「一致」コマンドとか言うので、『一致』とした次第。


Since two (2) right lines cannot enclose a space, the line BC must coincide with the line EF.
英語の感覚:
2つの線が空間を含みえない(面積・体積・厚みを持たない「線」の特性ゆえに、そこには空間が存在しえない)

cannotはここでは、「~しえない」のニュアンス。

enclose a spaceについては、「線はそもそも空間(面積・体積・厚み等)を持つものではない」という幾何学の定義・認識が訳者側にあれば、訳を間違う心配は無し。

 BC must coincide with [...]のmustは、point B shall coincide with [...]のshallと微妙に区別。
「(これまでの理屈上、以上のことから)~となるはずである」みたいな感じを頭の中に描きつつ、訳す。本課題文におけるshallは日本語のニュアンスだと、「~となるべきである。~でないといけない。」に近い。


Hence, the triangles agree in every respect.
英語の感覚:
「あらゆる点において(注:形状的な『点』のことではない)、2つの三角形は等しい。」


ともあれ、詩のようなきれいな言葉に訳すよりも何よりも、読んで正確に情報が伝達され、作業者に間違いのない仕事をしてもらう。そんな翻訳が良い技術翻訳なのだと思います。実業務をしてきている者としての実感としては、そう感じます。

日本語から英語への翻訳においては(自分が翻訳する場合は本課題と逆で、日英翻訳がほとんどなのですが)、日本語がそのまま機械的に英語(?)に置き換えられていたり、日本語のルールで英訳されるためか、英語として成立していない文章、ないしは情報として誤っている文章に遭遇することも、普通にありがちなこと。(そうした場合、英訳のほうは見ず、元の日本語を読んで作業する、といったことも必要になるかと思います。幸い日本語が読めるので、エンジニアとして自分が作業する場合に限っていえば、とりあえずそれで問題はない。あるいは、時間が許せば、自分で英訳しなおすことも。)

要は、作業するエンジニア等が翻訳された文書を読み、誤認識に至らないような翻訳をすればよい、ということになります。または、意味不明な翻訳なため、実作業者が文章の読み飛ばしをしたり、勝手に推測・判断をしないようにする、ということになります。そこが技術翻訳の面白さであり、難しさでもあるかと思います。(実務経験している領域であれば自分が何を説明しているか、実務者レベルで把握・確認できるけれども、そうでなければ難易度は上がる。)

また、さらに面白いと思うのは、原文がかならずしも親切に書かれていない場合も結構ある、ということ。日本語で書かれた文面の場合、説明する際、英語の表現とどこか異なったり、または、文章が省略されたような(抜け落ちたような)印象も受けるので、そういった行間も汲み取り、日本語を読んだ時と同じだけの情報を翻訳対象言語に書き換える、というものも必須かと思います。その際は、できるだけ余計な言葉を付け足すようなことは避けるようにし(オリジナルにない用語や説明が入ったりするのは、個人的にはあまり良いとは思わない)、また不足もないように工夫する、というのも面白さであり難しさであると思います。

言語を問わず、オリジナルの方に記述の間違いや抜け落ちがあったりもするので、翻訳者がそこに気づいて、記述する側に伝え、擦り合わせができるようであれば、品質の向上・維持につながると思います。

技術翻訳の唯一にして最終的なゴールは、「オリジナル言語を読んだ時に得られるのと同じ情報を翻訳対象言語においても得られるようにする」いうものか、と実務者レベルとしては感じています。

国境と時差を超えた作業によって、品質(クオリティ)が思わぬ時に思わぬ形で損ねられるないように、といつでも気をつけながら、自分自身、頑張って仕事をしている次第です。


 

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