Apr 28, 2015

ディクスボロの幽霊伝説 (その2) The Dixboro Ghost (Part 2)

 <<ディクスボロの幽霊伝説 (その1) の続き>>


ヴォン・ウォアトによる証言。
(1845年12月8日、アナーバーにてウィリアム・ペリーに証言がされた、と文献には記されている。)
 

幽霊との対面(1回目)
9月27日土曜日でした。7時から8時の間にあったことですが、私は家の窓の前に立っていました。妻は近所のハモンド夫人のお宅に出かけており、息子二人は自宅の中庭におりました。私は家の前を通って表の庭を歩いておりましたが、窓を鏡にして髪の毛を整えていた際、光が窓に映るのを認めました。

私は窓に手を当てて、よく見ようとしましたら、キャンドルスティックを持った女性がいました。持っていた手は左手です。先には火が点っていました。女性は普通の体型をして、簡易なガウンを着、頭には白い布が巻いてありました。やや前かがみの態勢で、目は大きく、しかし沈んだ目つきでした。顔の血色は良くなく、唇からは歯が覗かれました。

女性は室内を歩き、寝室に入っていきました。自分も家に入って、寝室のドアを開けましたが、中は真っ暗でした。マッチでロウソクに火を灯しましたが、見渡してみても、もう何もありませんでした。何も聞こえすらしません。ただ、最初に私が寝室のドアを開けた際、部屋の中のタンスの引き出しが開いて、それから閉まるような音は聞こえました。

数日後、自分がこの目で見たものについて人に話をして、そこではじめて自分のいたそこの家にはマルホランド未亡人(マーサ)という人が住んでいて、亡くなったのだと知らされました。
幽霊との対面(2回目)
二度目に同じ女性の姿を見たのは、10月で、夜中の1時頃でした。私は起き上がり、裏の戸から出ることにしました。寝室のドアを開けると、外の部屋が明るいのを見ました。ロウソクは見えませんでしたが、同じ女性が立っているのが見えました。彼女は5フィートほど離れたところに立っていましたが、こう言うのです。『私に触らないで。どうか触らないで』。

私は少し後ずさりし、『ここに何のご用ですか』と尋ねました。すると彼女はこう言いました。『あの人が持っていったのよ。あの人が私から少しずつ奪っていって、最後に私を殺した!殺したのよ!あの人はもう全部持っていった!』私は彼女に尋ねました。『誰が持っていったんですか』。すると彼女は『ジェームス、ジェームス。そう、ジェームスが持っていた。でも、このままでは済まされないわよ。ジョセフ!ああ、ジョセフ!ジョセフには手を出さないで』。そしてすべて暗くなり、静かになりました。


幽霊との対面(3回目)
三度目にこの女性を見たのは同じ10月。夜中に目が覚めた時です。時刻については覚えておりません。寝室がまったく明るかったです。ロウソクは見えず、女性がそこに立っているのみです。『ジェームスには、もう私に手出しさせない。絶対させるもんですか!私は彼の手に届かないところにいるんだから。ジョセフを放して!私の息子に手を出さないで!なんであの子を放してくれないの?』。そしてすべて暗くなり、静かになりました。
幽霊との対面(4回目) 
四度目に彼女を見たのも10月です。夜11時ごろで、私は暖炉の前に座っておりました。家族は寝入っており、私は物を食べておりました。その時、急に玄関のドアが開きました。戸口にはあの女性が立っており、私の知人である男性に支えられていました。彼女は体をのけぞらせ、今にも死にそうなほど苦しんでいる様子でした。女性は何も語りませんでしたが、そばで支える男性が口を開き、こう言いました。『彼女はもう死にそうなんです。もう死ぬと思います』。そして玄関のドアは、静かに閉じていきました。


幽霊との対面(5回目) 
五度目に彼女を見たのも、また10月です。夜が明けて少したったころです。家を出て仕事に行く時でした。表の庭にあの女性が立っていました。そしてこう言いました。『ジョセフには書類をちゃんと持っていてほしい。でも、でもそうじゃ・・・。ここで彼女は口をつぐみました。それから彼女はこう言いました。『ジョセフ!ジョセフ!私の息子に何か起きるんじゃないか、それが怖い!』


幽霊との対面(6回目) 
六度目も10月です。夜中でした。寝室の中で立っていました。前見た時のように部屋は明るくなっていましたが、しかしロウソクは見えませんでした。私は寝ている妻の方を見ました。目を覚まされたら大変だと思いました。女性は手を上げ、言いました。『彼女は起きないわ』。女性は大変な苦痛を感じているようでした。 彼女は前かがみになりながら、片手でおなかを押さえ、もう片手で薬ビンを持っていました。私は『それ何ですか』と尋ねましたら、女性は、『バルサムポプラって医者は言ってたわ』と答え、それから消えていきました。

幽霊との対面(7回目)
七度目も10月です。部屋の中に小さいベンチを置いて、それの作業ををしておりました。夕方の時間帯はこのベンチの作業となっておりました。女性が姿を現し、私にこう言いました。『ジェームスに物を言ってやりたかった。でも、結局できなかった。結局言えなかった。』私は彼女に聞きました。『何が言いたかったんですか』。女性は言いました。『あの人にとんでもないことをされた』。私は『誰のことですか』と言いましたら、彼女が言います。『あの人が、私をこんなに苦しめた』。そして女性はこう何度も言いました。『あの人たちに私は殺された。』

私は彼女に近づいて行きましたが、彼女は離れ、あくまで同じ距離を保ったままでした。『何か飲まされでもして殺されたんですか』と私は彼女に聞きましたが、口に溜まった泡のせいか、彼女の滑舌は悪く、よく聞き取れませんでした。

女性は奥の戸から外に出ていこうとしました。自分が知っている二人の男性が立っていました。うつむき、落胆したような風情でした。鉛が溶けるみたいに、二人とも姿が徐々に無くなっていきました。2インチほどのサイズの青い炎が溶けたあとの物に燃え移り、泡立てていきました。女性の姿はもう見えませんでした。それからすべて暗くなりました。


幽霊との対面(8回目) 
 その次に女性を見たのは、裏庭にいた時です。午後5時ごろでした。彼女は私にこう言いました。『あなたからジェームスに「心から反省しろ」と伝えてもらいたい。心から反省したらいいんだけれど。そんなことはしないでしょうけど。反省なんかするような人間じゃない。ジョンは悪人』。こう言って、彼女は何かボソボソ言ったのでしたが、私には何を言っている分かりませんでした。

それから彼女は『フレイン湖はどこにあるかご存じ?』と私に尋ねました。次にある重要な話をし、こう言いました。『このことは誰にも言わないで』。
(ヴァン・ウォワートがのちに明かしたところによると、この重要な話には、かつて、メイン通りとミル通りの角(マーサが生前住んでいた家の近く)に備えてあった井戸のことが触れられていたという。)

私は女性に、『あなたを殺したというその二人の男性の名前を公開してもいいですか』と尋ねました。すると彼女はこう言いました。『時は来ます。その時は来ますから。でも、もう終わり!もう終わり!悪だくみは終わり!』

そして彼女は息子ジョセフのことをゴモゴモと言い始め、それからすべて暗くなってしまいました。


幽霊との対面(9回目) 
最後に彼女を見たのは、11月6日でした。時間帯は深夜で、私は寝室にいました。女性は白い衣服で身をまとっていました。まっすぐ立って、顔色は悪いのが分かりました。『誰もここにいてほしくないのよ。誰にもここにいてほしくない』。そして彼女は聞き取れない言葉を発し続けていました。時々ジョセフという言葉は端々に聞こえはしました。
最後に彼女は、こう言いました。『私は自分の秘密を言いたかったの。私の秘密はもう伝えたはず』。そして、すべてが暗くなりました。
(ヴォン・ウォワート一家は、この翌日、家を引き払った。)
記録によれば、この女性の言葉には、アイルランド訛りがあったという。また、同じことを繰り返して言う癖もあったということだ。「あの人たちに殺された」ということと、息子ジョセフの名前は頻繁に出てきたという。


ディクスボロの幽霊伝説 (その3) に続く≫

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